“特別な支援”よりも、“ふつうの生活”を取り戻すことから
不登校やひきこもりの問題というと、どうしても「専門的な支援」や「カウンセリング」が必要だと思いがちです。
けれどこの本『不登校・ひきこもりの9割は解決できる』は、そんな思い込みをやさしく壊してくれます。
著者の高濱正伸さんと杉浦孝宣さんは、「まず生活リズムを整えること」こそが回復の第一歩だと明言します。
1.規則正しい生活こそ、立ち直りの土台
一番大事で真っ先にやらなければならないのは、規則正しい生活習慣を身につけることなのです。
この一文に、この本のすべてが凝縮されています。
不登校の背景には、人間関係や心の問題などさまざまな要因があるけれど、“朝起きて、食べて、動く”というリズムが崩れると、どんな支援も届かなくなる。
だから、どんな状態からでも、まずは“日常のリズム”を取り戻すこと。
当たり前のようでいて、これがいちばん難しく、そしていちばん効果的なのだと感じました。
2.小さな「お手伝い」から自己肯定感を育てる
著者は、子どもが小さいうちから「お皿を台所に持っていく」といった小さなお手伝いを始めることをすすめています。
さらに、誕生日や学年が変わるたびにレベルアップさせていくという工夫も紹介されています。
これは単なる“しつけ”ではなく、子どもが「自分も役に立っている」と感じる体験の積み重ねです。
家庭の中で「ありがとう」と言われる経験が、やがて社会の中でも“貢献できる自信”へとつながる。
そのシンプルで確かな流れを、著者は具体例を交えて教えてくれます。
3.外遊びとスキンシップが、心を取り戻す
遊びで一番大事なのが、外遊びです。
この言葉も非常に印象的です。
ゲームやスマホの中では得られない“太陽の光”“風”“身体の動き”こそが、心のバランスを整える自然なセラピーになるのです。
また、弟や妹が生まれたことでお母さんの愛情を感じにくくなった子どもには、スキンシップを通じて「大切にされている感覚」を取り戻すことが大切だと説きます。
「外で遊び、触れ合う」――シンプルだけれど、これはまさに“心の再起動”のような行為です。
まとめ:「家庭という小さな社会」を立て直す
この本を読んで感じたのは、不登校の回復に必要なのは「特別な治療」ではなく、“家庭という社会の再構築”だということ。
規則正しい生活リズム、家族の笑顔、小さな役割、そして外の空気。
どれも目新しい方法ではないけれど、続けることで必ず“変化のきっかけ”を生むものばかりです。
『不登校・ひきこもりの9割は解決できる』は、「どうしたらいいのか分からない」と悩む親の心を、もう一度“希望の方向”へ向けてくれる本です。
読むと、「できることは、まだある」と思える。
そんな力をくれる一冊でした。