書評

このままの教育ではマズい!教育界に警鐘を鳴らす1冊!

『「学力」の経済学』 中室 牧子

オススメ度

教育経済学者の中室牧子さんが書いたこの本。今の日本の教育界に必要な視点がはっきりと書かれています。教育に携わる人なら一度は読んでおいたほうがよい本と言えるでしょう。

教育経済学というのは「教育」を「経済」の視点から見ていくというもの。つまり、その教育方法や政策に科学的な根拠があり、なおかつ経済的に効果があるのかということを考える学問です。この本では「科学的な根拠」があることを教育界ではどれだけやっているの?という疑問について答えてくれます。

「教育」において「科学的な根拠が~」とかって語り出すと、大体誰かが「教育は科学では語れない!」とか言い出すんですよ。でも「科学的な根拠」があることって「教育」以外では当たり前のように大切にされていることですよね。例えば「医療」で「前の患者さんはこの薬をあげたら治ったから、この患者も同じ薬でいいよね」とかやったら大問題なわけです。患者さんの症状を確かめたり、血液検査をしたり、尿検査をしたり・・・そういったデータをもとに治療の仕方を決めていきますよね。

でも「教育」は違うわけです。なんとなく上手くいった経験があればそれにすがってしまう人が多くいます。そのため「子どもを全員東大に入れた」親の話を聞きたくなるんです。その方法が自分の子どもに当てはまるとは限らないのに。これではマズい。

さらに「教育」についてはともすると全員が評論家になりがちです。自分が体験・経験してきたことをあたかも「正解」のように語る人が多くいます。しかし、それはほんの一部の事実であって、その方法が正しいかどうかの科学的な根拠は全くありません。本来であれば、もっとデータをとり、情報を集め、科学的な根拠をもとにした教育を進めていくべきなのです。

この本では今までは当たり前のように語られてきた教育説に対して、科学的な根拠をもとに「本当に正しいのか?」ということをわかりやすく語ってくれます。特に「少人数指導に効果はあるのか?」「習熟度別の指導に効果はあるのか?」という話については目からウロコでした。

一方で「ほめる教育はどうなのか?」という問いに対し、筆者は「よくない」と答えています。しかし、これは著書の中でも語られていますが「なんでもかんでもほめる」のは「よくない」ということなので冒頭だけを読んだ人が勘違いしないようにしてもらいたいものですね。

何にしても、「子どもたちの目が輝いていた」とか「子どもたちが意欲的に取り組んでいた」とかいうよくわからない成果を自慢げに語ってしまう日本の教育界に一石を投じる作品となっています。先述した「ほめる教育」の是非や、その他に「ごほうび」の是非についても語られています。教育関係者はもちろんのこと、お子さんがいらっしゃる方にもぜひ読んでもらいたい一冊です。