書評

AIに負けないためには?これからの人間に必要な能力を教えてくれる1冊!

AI vs.教科書が読めない子どもたち

おすすめ度

国立情報学研究所教授の新井紀子さんが書き上げたこの本。これからの時代を生きていく人は一度は目を通しておいたほうがよいと思います。ただ、5年後、10年後にはこの本に書いてある内容がとんでもなく古い情報になっている可能性も踏まえて★4つです。情報社会はどう変わるかは見当もつきません。

さて、この本ではタイトルにもなっているAIについて様々なことが書かれています。例えば、私たちが一般的に使っている「AI」という言葉は正しいものではなく、正しくは「AI技術」と言うということや、「フレーム問題」と言われるものがAI開発の壁となっていることなどが書かれています。「AIってそもそも何?」という方はこの本を読めば大体のことがわかると思います。

タイトルにある「教科書を読めない子どもたち」という言葉も気になりますよね。「教科書が読めない」と言っても漢字やひらがなが読めないという文字が読めないという意味ではありません。これは教科書の内容を理解することができないという意味であり、読解力の話なんです。

新井さんが発明した「RST」という読解力の調査によると、問題によっては中高生の正答率が25%以下になるというものもありました。驚くべきことに問題は4択なのです。つまり、4分の1で正解を選べるわけです。運に任せても25%は正解できるはずなのです。それなのに25%を下回るというのは大問題ですよね。考えて答えているのに運任せよりも精度が低いなんて・・・

ちなみに問題はこういったものです。

次の文を読みなさい。

Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。

この文脈において、以下の文中にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

Alexandraの愛称は(      )である。

①Alex ②Alexander ③男性 ④女性

 

当然、正解は①のAlexです。

「AI vs.教科書が読めない子どもたち」より引用

決して専門知識が必要であったり、やたらと難しい言葉が使われているわけではありませんよね。中高生の教科書に出てくるようなレベルの文章なのです。それを理解できていない子どもたちが多くいるのです。

「今の時代、教科書くらい読めなくてもなんとかなるのでは」と思っていないでしょうか。とんでもありません。教科書の内容を正しく理解できないということは、一人で勉強することができないということです。「予習・復習を!」と学校から言われても一人で勉強できないのですからどうしようもありません。

教科書レベルの文章を正しく理解できないのですから、インターネットで調べても書いてあることを正しく理解することができる可能性は低いでしょう。また、将来的にマニュアルや資料の読み取りを必要とする場面でも困ることが予想されます。

そうは言っても生きていく上で必要な能力はたくさんあるのに、なぜ「読解力」を取り上げているのでしょうか。答えは単純です。AIには「読解力」が足りないからなんです。

これからの社会では、AI技術が発達し、生活の様々な場面でAIが活躍することが予想されます。今ある職業の多くはAIに代わられることでしょう。その時にどんな人が必要とされるのでしょうか?これも単純な話です。AIにできないことをできる人が必要とされるのです。つまり「読解力」がある人が必要とされるのです。

AIが苦手とするのは文章を読み取ることです。AIは計算は得意ですが、文脈や言葉の微妙な違いを判断することは苦手なのです。しかし、そのAIが苦手な分野すら苦手な人は・・・本当にできることが限られてしまいます。

もちろん「読解力」の他にもAIに打ち勝つ手段はあるでしょう。しかし、これから必要となってくる「読解力」を育まなくてもよい理由にはなりません。

この本を読めば、今後「読解力」が必要となる事実や今の子どもたちが置かれている状況がどれだけ危険なものなのかがわかります。「AIって何?」という方も「うちの子はAIに勝てるかしら?」と不安な方もぜひ読んでみてください。